鍛造のジュエリーができるまで・後編

こんにちは。オンラインストア担当の荒瀬です。

鍛造製法でジュエリーを制作する工程の一部を実験レポート形式でお届けする「鍛造のジュエリーができるまで」。

前編では、4つの実験工程のうち、「1. 溶解・凝固」「2. 叩く」をお届けしました。

1. 溶解・凝固
金属に火を当て、溶解します。溶けた金属を型に流し込み、凝固させます。

2. 叩く
凝固した金属を叩き、締めます。これによって密度・強度が増します。

3. 延ばす
圧延ローラーを使用して均一に棒状に伸ばします。

4. 計測
直径・長さを揃えてカットし、重量を計測します。

本日は、後半の「3. 延ばす」と「4. 計測」をレポートしてまいります。

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3. 延ばす

前工程「2. 叩く」で鍛えられて硬く締まった地金を、”圧延ローラー”で適切な太さになるまで伸ばしていきます。

その名の通り、上下のローラーで圧力を掛け、ハンドルでローラーを回転させて金属を加工する機械。とにかく重く、剥き出しのハグルマやローラーは指を挟むと大怪我をするので危険です。細心の注意を払い、手元から金属の感覚を得られるようゆっくりと作業していきます。



【シルバー】

まずは柔らかいシルバーから。シルバーはハンドルを回す感覚が想像していたよりも軽く、また初めて行う作業ということもあってなかなか感覚が掴めません。

また、叩く工程と同じく力を加えることによって金属が締まって硬くなります。そのまま続けると加工がしづらく、ヒビ割れの原因にもなるため、圧延を数回行ったところでなまして金属を柔らかくします。以降この作業の繰り返しです。

【ゴールド】

3種類の金属の中では一番硬いゴールド。シルバーと比べるとハンドルを回す感覚が重く、その動きの鈍さからも硬さが感じられます。

細く延ばしていく過程はシルバーと同様に作業を進めていましたが、ここで問題が発生。圧延の途中で角にヒビが入ってしまいました。脆弱な部分を残したままにしてしまうと強度が保てず、品質に影響が出てしまいますので、ヒビの部分を溶かして修復します。溶かした部分は再度叩いて金属を締めて強度を高め、圧延を再開しました。



【プラチナ】

粘り気の強いプラチナは、圧延の工程でもそのネバネバ感を発揮。素人の私でもハンドルを回すと分かるほど手元の感覚にも違いが明らかです。粘り気があるので加工がしやすい(形が変わりやすい)と思っていましたが、作業をしてみると重くねっとりしていて、意外と加工に時間がかかります。

最終的に、3種類とも直径2.4mmになるまで加工し、「3. 圧延」の工程は終了しました。


上から、シルバー・ゴールド・プラチナ。スタート時の重さは全て約6.3gです。

叩かれて歪な形をした金属が徐々に滑らかな角線になっていく変化は目で捉えることができ、だんだんと普段目にしているジュエリーに近づいてきています。

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4. 計測

最後に、同じ直径に圧延した金属を長さ50mmにカットし、計量します。金属の種類によって、同じ直径・同じ長さでも重量が異なります。


【シルバー】約2.81g

手に持ったときに、他の2種類よりも明らかに軽いシルバー。白っぽい色味は見た目も軽やかです。軽く柔らかいので、ニッパーを使用して片手で簡単に切断できました。

【ゴールド】約4.35g

シルバーと同じように片手で切断しようとしたところ、切れません。ニッパーを上手く使えていないということもありますが、シルバーとは硬さが全く違います。職人・高野に角線をもってもらい、両手でニッパーを握ってやっと切断できました。

【プラチナ】約5.81g

切断の際、ニッパーの刃がグググッと入っていくのが分かります。シルバーとゴールドはパチンと音がして鋭く切れましたが、プラチナは捩じ切れる感覚で、切断面も少し伸びているように見受けられます。切ったときに破片も飛びません。

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以上で実験は終了です。

ジュエリー制作素人の私が鍛造製法の工程のほんの一部を体験し、金属の特性や取り扱いの難しさを肌で感じお届けしてきた「鍛造のジュエリーができるまで」。

オフィスに居ると、身体に響くような金槌の音や、ゴロゴロと勢いよくローラーを回す音が聞こえてきて、それが日常です。しかし、実際に体験してみるととても危険で、僅かな変化に気を付けながら同じ作業を繰り返す、地道かつ繊細な工程の連続でした。

NIGHTWORKSHOP JINGUMAE”をはじめとするhumのワークショップではお客様ご自身でジュエリー制作を体験していただくことができますが、今回ご紹介したような地金の準備は事前に職人が済ませておくことが多く、滅多にご覧いただく機会のない部分です。

例えばリング制作のメニューでは、圧延された角線を“芯金”という棒状の工具に巻き付けて円形にしたり、表面のテクスチャーを付けるところから作業がスタートしますが、実はその前にも「下ごしらえ」があるという訳ですね。こうしてご予約いただいたメニューに合わせて地金をご用意する必要があるため、NIGHT WORKSHOP JINGUMAEのご予約は受講日の1週間前までとさせていただいています。

いかがだったでしょうか。この記事を通して、鍛造のジュエリーに対する理解を深めていただけていれば幸いです。

そして、もっと知りたい!体験してみたい!と思われましたら、ぜひNIGHT WORKSHOP JINGUMAEへご参加くださいませ。

メニューの詳細やご予約方法、実際のワークショップの様子はこちらからご覧ください。

・humオフィシャルサイト”NIGHTWORKSHOP JINGUMAE
・humオフィシャルサイト”Journal"「NIGHT WORKSHOP JINGUMAE -report vol.1-
・youtubeチャンネル“hum jewelry making

今週もお読みいただきありがとうございました。