THE SYMBOL OF REFINED METAL - 制作の裏側・後編 -
こんにちは、オンラインストア担当の荒瀬です。
本日は、THE SYMBOL OF REFINED METALの制作を担当している職人・高野へのインタビュー後編をお届けいたします。
→前編はこちら
前編では、ブレスレットやネックレスに使用されているフックへの疑問を皮切りに、制作工程の詳細から高野の仕事への取り組み方、アトリエ内の師弟関係(?)にまで話が広がり、作り手の素顔も窺い知ることができました。
続く後編では、お客様からこれまでにいただいた商品本体に関する質問や、スタッフから挙がった疑問に、高野に答えてもらいました。
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―それではここからは、いただいたご質問・疑問をぶつけていきますね。正直にお答えください(笑)。
高野:どこまで話していいのか悩みますね。よろしくお願いします。
―商品1点、もしくは1パーツを制作するのにかかる時間はどのくらいですか?
高野:工程ごとに作業を進めているので、正確に計測したことはないのですが、1unit(2パーツが繋がった状態)がだいたい15分くらいです。
―では、具体的に商品でいうと?
高野:例えば、RF2021-N12(40cmのネックレス)の場合、60unit(120パーツ)が必要になります。1unitにつき4箇所をロウ付け(※金属の接合する部分を融点の低い金属で溶接すること)しているので、チェーンの部分だけでロウ付けが240箇所必要になります。
―240箇所!話題に上るのはパーツやunitの数で、そればかりに目が向いてしまいますが、もちろんジュエリーに仕立てるためにはロウ付けが必要になりますもんね。ジュエリー制作ではよくある工程だし、新人も行う作業ですが、それをひたむきに続ける努力と忍耐力。そこまで意識するとまた見方が変わってきます。
高野:ちなみに柳生さんは一日8時間でチェーンリング(RF2021-R3)が2本作れるそうです。
―職人からすると簡単な作りで誰でも作れると聞いたのですが、他の商品に比べてどのあたりが作りやすいですか?また、その中でも難しいと感じる工程はありますか?
高野:簡単・難しいというよりは、やればできる、ということです。特別な技術は必要なく、入りたての職人でも誰でも、やればできるんです。コレクションが始まった当初、入社間もない僕でも作れるデザインを貞清さんが考えて、それを実際に僕が作る。そうすると、熟練の職人たちもやらざるをえないのではないか、そんな目論見もあったようです。これ、言っていいんですかね?(笑)ほかのブランドがRefine Metal COLLECTIONをなぜやらないのか、という理由にも繋がるのですが、humは入りたての職人がやり遂げたよ、というひとつのアピール・アプローチでもあったと思います。
―着け心地は良いですか?毎日身に着けたいから、引っ掛かりがないか気になります。
高野:はい、すべてのパーツの角を落として、肌馴染みが良くなるようにしています。以前とあるスタッフが、「ファーストコレクションのブレスレットはコロコロと動くのが良い」と言っていたんです。それを聞いたときに、転がるんだったら角が丸い方がいいのでは?と思って、角を落とすようにしました。制作当初から、角線のパーツは形状としてどうしても引っ掛かる感じがあるよねという話は出ていたので、ちょっとずつ改善していました。もちろん、セカンドコレクションであるTHE SYMBOL OF REFINED METALでも同様に仕上げています。
―確かに、角線のシャープな見た目とは裏腹に、肌に乗せたときに柔らかさすら感じられますよね。では、フックの部分はどうですか?
高野:フックの持ち手のクイっと上がってる部分も、制作段階で「開閉時に指が痛いよね」という声がありました。手で削っている分、どうしても作業しながら地金が薄くなっていって、指に引っ掛けたときに肌当たりが気になってしまうんです。開閉がスムーズにできる程度の長さと角度は残しつつ、肌や服には引っ掛からないように、厚み・肌当たりには気を遣っています。
―着け心地の良さと着脱のしやすさを両立させるよう工夫されているのですね。
―Refine Metal COLLECTIONをはじめとする鍛造で作られたジュエリーと、鋳造で作られたジュエリー、製法による強度の違いはありますか?
高野:鍛造の方が地金が締まって硬くなるので、強度が増します。密な感じです。もちろん、humの商品は鋳造でも強度上問題はありませんので、ご安心ください。
―全ての工程においてハンドメイドのコレクションですが、職人によって仕上がりの雰囲気に違いがでるのでしょうか?
高野:正直、細かく見ると多少の差はありますね。
―私から見ると分からないのですが・・・・。
高野:人によってクセはあると思います。例えば、パーツの端の曲線は、曲げ始めの位置は決まっているのですが、曲げる角度は正確には決めていません。なので、人によっても、また1本のリングやブレスレットの中でも、パーツごとに僅かに差があるのは事実です。
工具の先端についている目印にパーツの端を合わせて曲げていく。
―ちなみに、使用している工具にはどのようなものがありますか?工具はみんな一緒ですか?
高野:ファーストコレクションでは、市販の工具を手で削って、パーツを曲げるときの軸にしていました。もちろん計測しながら削るのですが、手で削っていくので、人によって使っている軸(工具)に僅かに差があります。一方セカンドコレクションでは、市販の工具の一部をそのまま軸にしているので、工具毎の差はありません。また、軸が正円なこともあり、出来上がったパーツは前作に比べて少し丸みを帯びた形になっています。
先端を手で削った工具。ここに合わせて角線を曲げてパーツを形作る。
―THE SYMBOL OF REFINED METALのチェーンリングにホワイトゴールドがあって、ブレスレットやネックレスにない理由はなんですか?
高野:ファーストコレクションの時から、基本的にはホワイトゴールドにはダイヤモンドを留めるようデザインされていました。そのため、もともとの商品設定としてホワイトゴールドのチェーンブレスレット・ネックレスはご用意がありません。また、強度の関係でフックだけはどうしてもイエローゴールドになってしまいます。都度お見積りをご提示する形でオーダーを承れますので、ご希望の方はお気軽にお問合せください。
―それでは最後に、作り手から見たポイントやおすすめしたい商品はありますか?
高野:THE SYMBOL OF REFINED METALでは、今回のインタビューでメインでお話ししてきた小さなモチーフの連なったチェーンブレスレット(RF2021-BR11)が良いなと思っています。このブレスレットは、フックとウケにかけてグラデーションになっているんです(ネックレスも同様)。本体のパーツに対してフックとウケが大きいため、そのままではパーツとフックを組むことができません。そのため、フック・ウケそれぞれを含めた3unitは全て違うサイズで、フックにかけて徐々に大きくなっています。
高野:ブレスレットはチェーン本体が主役になることが多いですが、これは通常裏になって隠れがちなフックも顔になります。部品がジュエリーの顔になるのがいいなって。humは基本的にシルバーチェーンのブレスレットにもゴールドのフックを付けています。もちろん強度上の理由もあるのですが、このように部品にスポットが当たるのが良いところだなと思います。
高野がブレスレットを着けた姿を撮影させてもらい、インタビューは終了。
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いかがでしたか。
高野と前編に登場してもらった柳生は、普段は物静かかつ穏やか。地道に黙々と作業を進め、積み重ねて、商品を制作している印象です。どちらかというとクールな二人ですが、インタビューを進めるうちに「そういえばあの部分は・・・」「こんなことがありましたよ」「ここにスポットを当てたら面白そう」と次から次へと話題を提供してくれて、仕事への熱意やプライド、秘めたる意思の強さのようなものがひしひしと感じられました。
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先日、THE SYMBOL OF REFINED METALのネックレスをオーダーしてくださったお客様から、商品のお受け取り後にメールが届きました。詳細のご紹介は差し控えますが、ネックレス制作に向き合う職人の姿を思い浮かべ、その職人の想いも含めてネックレスをこの先ずっと大切にしてくださること、またこのネックレスがお客様の気持ちの後押しになると、大変嬉しいお言葉をいただきました。
humの職人が手間暇をかけて、逃げることなく仕事に向き合い、想いを込めて制作するTHE SYMBOL OF REFINED METALは、そのクオリティや着け心地はもちろん、何よりもジュエリーから放たれる熱量を感じ取っていただけると確信しています。
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デザインやスタイリングをきっかけにご検討くださっている方にも、生産背景からコレクション自体に関心をお持ちの方にも、今回のインタビューを通して制作工程や職人の試行錯誤、仕事に向き合う姿勢を知っていただき、皆様の様々な疑問やオンランイン購入の不安解消に繋がれば幸いです。そして、徐々に浸透しているhumの価値観が、更に多くの方に広まるよう願っています。
最後でお読みいただきありがとうございました。